自然に生かされてコミュニティを創造する~山中温泉「かよう亭」上口代表インタビュー~

『大きいことはいいことだ』のテレビコマーシャルが流れた高度成長期。この時期を境に、日本では全国的な工業化が進み、「質より量」を重視する傾向が長く続きました。けれども時代の流れに逆らい、父の代に築いた大規模温泉旅館を廃止して、わずか10室の数寄屋造りの旅館を創りあげた宿主がいます。2017年に創業40周年を迎えた山中温泉「かよう亭」代表取締役社長 上口 昌徳(かみぐち まさのり)さんに、自然とコミュニティ、そして人々との関わりについてお話を聞かせてもらいました。

目次
40年前に今を先取りした旅館が北陸に存在した
フランクフルトで「20室のホテル」と出逢い啓示を受ける
当たり前の心遣いが支える本物の豊かな食卓
40年の宿の歩みと未来へ懸ける想い
「本質」をキーワードにつながる


山中温泉「かよう亭」代表取締役社長 上口 昌徳(かみぐち まさのり)さん


40年前に今を先取りした旅館が北陸に存在した

(以下、澤) :(今朝摘み自家製ハーブのミントティーをいただきながら)
1970年代の日本は、大型旅館に観光バスが次々と乗りつけては客を運びこむ、そんな時代だったと思います。

「スモール・ラグジュアリー・ホテル(※小規模で高級な宿)」の概念すらなかった頃に、なぜ客室10室・客員20名のお宿を開業しようと思いつかれたのでしょう?

上口 昌徳さん(以下、上口) :そう聞かれると、答えに窮するんです。振り返ってみると、何故私は、あのとき世間とは真逆の道を決断して歩めたのか。

当時は高度成長期で、「日本列島改造」「所得倍増」のために自然が破壊されていく、「自然とは人間が征服するもの」という考え方が当たり前の時代でした。

でも、東京での7年間の学びを終えて、澄んだ大気と鮮やかな緑に清冽な川の流れる古里に戻った私は、この土地の持つ「風土」の大切さに目覚め始めていました。
ひとが自然を征服するやり方は絶対に誤っていると思ったんです。

昭和48年のオイル・ショック以来、全国的に旅館の大規模化が進むなか、自分はそれには乗らないと決心もしていました。

 :そう考えはしても、実際に50室の旅館を閉じるとなると勇気がいります。誰にでもできることではないと思いますが。何かきっかけはおありだったのでしょうか。

上口 :世間に反逆し、親不孝をしてまでも、私が自分の考えを貫き実行できたのは、実は「旅」のおかげです。

 

フランクフルトで「20室のホテル」と出逢い啓示を受ける

上口 :田舎に帰って旅館業を継ぐ条件として、旅をさせてほしいと両親に頼みこみ、20代後半から30代の半ばまで、1ドル360円の時代に、沖縄から始まりアジア全域、アメリカ、ヨーロッパを旅しました。

おそらく諸国の土地を自分の目で見て、肌で感じ、人と付き合ううちに、60兆の細胞の中に何かが入ったのでしょう。

あるときフランクフルトで行われる国際見本市の視察に出向いたところ、いくら会場を探しても見つからない。ようやく探しあてた会場は、何とドイツと日本の国旗を2本だけ立てた間口三間(約5.5m)の小さなホテルでした。

けれども入口から1歩足を踏み入れると、ロビーには中世の美術品が至る所に飾ってあり、そこには芸術空間が広がっていました。客室数20あまりのホテルは、この街の文化人の集う場でもあったのです。

 :街の文化を育む役割を、ホテルが果たしていたのですね。

上口 :まさしく「スモール イズ ビユーティフル」。そのとき私は、このような形態でも旅館業をやっていけると気づいたのです。そして、同時に思いました。
なぜ日本人は、こんな素晴らしいものを作ろうとしないのか、と。

またあるときはフランスの客室数3、4室の農場に隣接するオーベルジュ(※主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストラン)を訪れました。そこではオーナーシェフが、客人に美味しいものを食べさせようと励んでいました。

かの地では古くからの僧院・修道院がオーベルジュを兼ねている場合も多く、食事の後には「ついでに泊まっていきなさい」といった態で、客は主とのつながりのなかで1泊2泊としていきます。

ヨーロッパには文化と芸術を大事にする土壌があり、その裏には豊かな自然があることを実感しました。

ひるがえって日本の旅館・ホテル業界を眺めると、ただ設備を大きくしてお金を稼ぐだけ。浅くて薄っぺらで哲学のない、経済的な繁栄のみを追い求める姿勢しか見出せませんでした。

 :外国旅行でのご経験が、かよう亭誕生の原動力となったのですね。

上口 :旅先で気付きを得てから、父の旅館を廃業して、かよう亭を開業するまでには3年の無為の日々が存在します。でも、それは創造の時間、最高の期間でもありました。

「自然を生かすのではない、自然に生かされている自分(個)を根底において生きるにはどうしたらいいか」。量的拡大や数字は追わず、質の深さ、これだけには誰が何と言おうとこだわりたいと思いました。板前と2人で、夢を追い続けた3年間でした。

 

当たり前の心遣いが支える本物の豊かな食卓

 :板前さんと言えば、かよう亭の食事は、九谷焼や山中漆器を使った見事な盛り付けを鑑賞しながら、素材を生かした旬の海と山の幸を味わえると有名ですよね。

けれども最も特筆すべきは、食卓にのぼる材料の産地と作り手が誰かわかる、トレーサビリティー(※食品の安全を確保するために,栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること)への配慮を、開業当時から続けていらっしゃる点ではないでしょうか。

上口 :訪れる客人の、1泊なら24時間の間、朝ごはんを食べて出立するまでの命を預かるのが宿屋です。たとえば私なら、現在86歳ですが100歳まで生きると仮定して、残された日数は約6000日。その残りの1日目を迎えるにあたり、この宿が旅人の心身の蘇生の場であったかどうか。その点は常に問われると考えています。

ひとりの人間の余生の出発点なのだから、空気や水のような私たちが生かされている自然が本物であるのは当然としても、他の全ても、限りなくまがいものであってはならない。

本物であることは当たり前で、本物であるべき。命の永らえに、これっぽっちも偽物はあってはならないのです。

東京など大都市の食べ物は、本物を含めて豊富にあるかもしれません。けれども、誰が作り、どこで採れて、どう流通しているかを全部はわからない。ここ山中なら、その過程が全て見える。把握できて当たり前なんです。

これをもし本物と呼び、作り手の顔が見える食材で整えた食事を重宝がられるのであれば、微塵も狂わせたくない。「命の分身である食べ物に責任をもつ」。これは私が40年前に決心した気持ちでもあります。

かつての巨大化する温泉旅館では、朝食の膳に、むなしく干からびた沢庵、冷めかけの味噌汁、セロファンに入った海苔が並んでいました。「1秒でも早く次のお客を入れたい(回転率をあげたい)」と言わんばかりの振る舞いに、なぜ良心ある連中が矛盾を感じずにいられたのか。自分には、それが不思議でした。

 :合鴨農法で作られるお米や、無農薬の野菜などを栽培・流通させるには、農家側は余分なコストと時間の負担を強いられます。良心的な生産者から食材を仕入れる行為は、宿泊客の食の安全・安心を守ると同時に、地元の農業を応援する活動ともいえますね。

農業に加えて、伝統産業の山中漆器などの「ものづくり」に打ち込む職人さん達の保護と育成のために、かよう亭は「職人未来塾」も主催されています。そちらについても、お聞かせ願えますか。

上口 :北大路魯山人(※料理研究のかたわら食器制作を行った陶芸家)のような作家は、文化・経済交流の先駆けではないでしょうか。地域に職人さえいれば、どんな土地でも何とかなる、再生すると私は信じています。

地元の「ものづくり」「ものづくりに携わるひと」を大事にする。かよう亭自体がコミュニティ空間です。伝統に支えられた文化を下敷きとしたコミュニティと同じ方向を向いて発展するためにも、「ものづくり」をする人たちがいてくれると最高です。私も観光職人でありますから。

そして21世紀の今こそ、1689年この地に逗留した芭蕉が「山中は日本の桃源郷だ」と称したのどかな風土が、ここにあればいいのにとも感じています。

 

40年の宿の歩みと未来へ懸ける想い

 :自然の景観を損なわないためにと買い取られた森林を含めた、かよう亭の敷地は、約1万坪と広大です。言葉通り、大自然に包まれて宿で過ごすひとときは、訪れた旅人にとって忘れられない特別な時間となるのではないでしょうか。

上口 :昨日初めてお泊りになられたお客さまが、食事を召し上がられないうちに、もう来年の同じ日に予約を入れてくださいました。
なぜでしょうかとお尋ねしたら、「ここの空気感だ」と答えられて。感動しましてね。

3年前に中国の方がお泊りになられたときには、「一家人」という言葉を残して帰られました。本来、かよう亭は「賓至如歸」という亭是があります。「我が家に歸って来たかの様な寛ぎの宿」という意味ですが、中国の旅人は「この宿で旅人ではなくて、この宿の家族の一員になった」との言葉です。かよう亭は、私の色々の想いを込めてつくりましたが、旅人が大事な心許し合える友人になり続けています。

全て人に助けられてきた私の人生の最高の贈りものは「人」です。従って、人間の生きがいとは「他者への貢献」。訪れる方をどう心豊かにしておあげ出来るか、そしてそれは所謂、旅人のリピート率と深いお付き合いの仲となれるかで判断できます。今、点数をつければ55点。道半ばです。

 :これでも55点ですか。

上口 :まだ皆の心を捉えられていないから(笑)。
今後も地域の良さを生かし、自然を大事にしたコミュニティ創りを続けたい。ファストライフ志向の真逆、スローライフをやりたいですね。

 :含蓄のあるお話を、どうもありがとうございました。

(おわり)

「本質」をキーワードにつながる


 :上口社長の娘さんにあたる竹内 千津さんに、かよう亭とルバンシュ化粧品のつながりについてお聞きしました。

竹内 千津さん(以下、竹内) :ふとしたきっかけで千田社長と知り合いになって、化粧品作りに対する想いに、私も主人も感銘するところがありました。「お客様に安全なものをご提供させていただきたい、同じ地元で、職人さんといっていいくらい一生懸命コスメを作られているルバンシュ製品を使わせていただけたら」との思いから宿に基礎化粧品を置いています。お客様からお土産をいただいたときなどに「石川県の化粧品なので、よろしければお使いください」とご紹介もさせていただいています。何より「口にいれても安心」である点が良いですね。

 :「本質」をキーワードに、お父様の上口社長をはじめとした皆さまの想いがつながりひとつとなり、化粧品選びにも表れているようです。お話ありがとうございました。


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