無添加化粧品の抜け道「キャリーオーバー」

無添加化粧品を使い肌にトラブルの起きた経験を持つ人は、案外多いようです。私(ライター澤)も10年ほど前に、「パラベン無添加」と表示してある自然派化粧品のローションを使い、顔が真っ赤に腫れあがった経験があります。その肌荒れの原因は、フェノキシエタノール(石油系防腐剤)でした。
前回に引き続き、株式会社ルバンシュ 代表取締役の千田 和弘(せんだ かずひろ)さんに、ライター 澤あきこ(さわ あきこ)がお話を伺いました。

目次
「無添加」 ≠ 悪いものが入っていない?
見えない添加物「キャリーオーバー」
「無添加」に振り回されないコスメ選び


株式会社ルバンシュ 代表取締役の千田 和弘(せんだ かずひろ)さん

「無添加」 ≠ 悪いものが入っていない?

千田 和弘さん(以下、千田) :「ボタニカル(植物性)」を売りものにしている人気のシャンプーに、「パラベンフリー」と書いてある製品があります。

パラベンについては、皆さん比較的ご存じです。そのため、このシャンプーのPOP広告は、ちらっと見ただけだと「石油系の防腐剤を使っていないんだな」と誤解を招きそうなデザインになっていました。

僕自身も石油系の防腐剤は無添加だと思い、それでも念のため容器の裏側の成分表記を確認したら、フェノキシエタノールと書いてある。実は、別の石油系防腐剤が入っていたんです

僕なら、この2つのどちらかを化粧品に配合しなければいけない場合には、迷わずパラベンを使います。フェノキシエタノールよりも歴史が古くて、幅広く化粧品に使用されていますし、経験上でもパラベンの方が、肌刺激が弱いからです。

肌に刺激の強い成分を配合しているのに、「(広く知られている石油系の防腐剤は加えていません、だから)肌に優しい無添加です」と、堂々と製品を売り出すメーカーが後を絶ちません

 :嘘をついていないけれど、真実は語っていないですよね。

千田 :化粧品の「無添加」とは何を意味するのかというと、1980年に旧厚生省の制定した「※表示指定成分を配合していない」事実を表しています

これらの成分以外にも、石油由来の合成成分は数千種類もあります。表示指定成分無添加の化粧品=悪いものが無添加、天然成分の化粧品ではないんですね。

一般の方の考える「無添加」と、化粧品業界の基準にもとづいた「無添加」の間では、両者の認識にズレが生じているのです。

 :私も勘違いしていました。

千田 :「無添加」の響きは良いのですが、化粧品の実態とはかけ離れています。消費者心理にも強い影響を与えるこの言葉の安易な使われ方には、同業者としてどうかと思いますね。

見えない添加物「キャリーオーバー」

千田 :もうひとつ、無添加に関するまぎらわしい例を挙げると、化粧品の「キャリーオーバー」制度があります。

2001年から化粧品の「全成分表示」がメーカーに義務づけられました。けれども、パッケージに書かれている成分のみが化粧品に配合されているとは、限らないんです。

 :「キャリーオーバー」ですか。初めて聞きました。

千田 :水で抽出した天然原料のエキスを、そのまま置いておくとどうなるか。何もしなければ、必ず腐りますよね。そこで原料メーカーは品質を保つために、これらのエキスにパラベンやフェノキシエタノールを加えます

原料に一定量配合された石油系防腐剤は、製品にも同時に防腐効果を発揮します。そのため化粧品を作る段階で、防腐剤を新たに加えなくて済むケースもあります。

このような原料にだけ含まれる少量の添加物(防腐剤)は、化粧品メーカーの判断により成分表示から外せます。これらの成分を「キャリーオーバー」と呼びます。

つまり、化粧品メーカーは、自分たちの手では防腐剤を加えていないので、「防腐剤無添加」と表示した化粧品を合法的に販売できるんです。こんな仕組みは、消費者には知りようがないですよね。

 :あえて化粧品会社がパッケージに書かなければ、無添加で通用するなんて。私たちは何を信用したらいいのか、わからなくなります。

千田 :防腐剤無添加をやたらと売りにするところは、まず怪しいと思ってください。

 :言葉に惑わされないように、気をつけます。

「無添加」に振り回されないコスメ選び

 :私たち化粧品ユーザーが、「この成分は自分の肌には危ない」と表示を読んで、わかるようになるといいのですが。

千田 :人によって(成分が)肌に合う・合わないもありますから、難しいですね。

防腐剤無添加で作れる化粧品は、実際にはごく僅かです。
水分を含まないパウダー状やオイル100%の化粧品、pH(ペーハー)がアルカリ性のため腐敗しにくい固形石鹸など、本当に限られています。

ですから、成分表示の最初に(配合量の多い順番に並ぶ)水と記載されている商品であるにもかかわらず、防腐剤無添加をうたっているものは疑わしい

「キャリーオーバー」として、表示をせずに石油系防腐剤を入れている可能性があるでしょう。

もし、そのような商品を見たら、メーカーに直接連絡して「どうして防腐剤無添加で腐らないのですか?」と問い合わせてみてください。メーカーから納得のいく回答が得られれば、その商品を信じてもいいと思います。


ルバンシュの化粧品の60%以上が「キャリーオーバー」ゼロを実現

 :ルバンシュではキャリーオーバー問題に、どう対応されていますか。

千田 :本来の「キャリーオーバー」は、原料に含まれる防腐剤が製品に影響(抗菌力)を与えないほど微量なときに表示が免除されるものです。

実はルバンシュの商品にも、原料段階で石油系防腐剤を含んでいるものは、ごく僅かではありますが存在します。それは、天然原料の多くに石油系防腐剤の添加されている現状があるからです。

当社は独自の社内基準を設けて、製品の抗菌力や肌の刺激に影響が出ないレベル以下に防腐剤を抑えるよう徹底しています。

さらに、ルバンシュ化粧品の実に60%以上が「キャリーオーバー」ゼロを実現しています。今後もこの割合を増やすべく、天然オンリーの独自原料を開発し、原料メーカーと協力しながら、石油系防腐剤を含まない天然原料作りにも取り組んでいきます。

「口に入れても大丈夫」とパンフレットやホームページに載せている表現や、僕が人前でルバンシュ製品を「食べる」行為は、「書かれている成分以外に隠しているものはないですよ」のメッセージを込めたつもりです。

当社を例に出しましたが、言葉以外では、ボトルの色や形、素材にも、それぞれの会社の想いは表れています。次回は、天然原料をちゃんと配合しているかどうかを化粧品容器の色や素材から知る方法をお話します。

 :コスメ選びは、化粧品メーカー選びでもありますね。本物の見分け方を、ぜひ教えてください。

※表示指定成分 旧厚生省が「アレルギー反応を起こす危険性のある」と表示を義務づけた102種類の合成成分。本文中のパラベンも該当する。

 

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